都市部を中心とした新築マンション、新築戸建て住宅の価格高騰や供給不足の中、割安な中古住宅が注目されています。中古住宅には新築住宅とは違った特徴があり、また同じ中古住宅でも、戸建て住宅かマンションかによって購入検討時のチェックポイントが異なります。今回は、中古住宅購入時のチェックポイントについてまとめました。 |
そもそも、中古住宅ってなに?
中古住宅とは「完成後1年以上経過している建物、または完成後1年未満であっても一度でも入居があった建物」をいいます(品確法、公正競争規約による定め)。
広告などではよく「未入居物件」や「築浅物件」という表示があり、新築物件と誤解されることもありますが、これらはいずれも中古住宅のことで、取引上や税制上の扱いが新築住宅と異なるため注意が必要です。
「未入居物件」は、完成後未入居のまま1年以上が経過した住宅をいいます。建物の完成後1年以上売れ残っている、新築住宅の購入者が何らかの事情で入居しないまま売りに出した、などの理由が考えられます。
また、築後1年未満でも「築浅物件」と表示されているケースは、一度入居があった建物で新築とはいえません。
中古住宅の購入時にかかる費用まとめ
中古住宅購入時の費用については、新築住宅とは異なるチェックポイントがあります。
(1)中古住宅の消費税
新築住宅の場合、建物が消費税の課税対象となりますが、中古住宅を個人から購入する場合、消費税は非課税です。
ただし、最近では中古住宅を不動産会社が買い取り、リフォームやリノベーションを施したうえで再販するケースも多く、売主が不動産会社の場合は建物に消費税がかかります。
(2)仲介手数料
不動産を仲介を経由して購入する場合、予算の中にも仲介手数料を計上しておく必要があります。
仲介手数料は次の計算式で計算します。
例えば3,000万円の中古住宅を購入した場合、仲介手数料の上限は税込で105.6万円と、かなりまとまった額になります。
(3)リフォーム費用
中古住宅を購入する前後のリフォームの実施状況は全国平均で74.9%となっています。
売主がリフォームを行った物件を購入するケースもありますが、全体のうち46.6%は買主がリフォームを行っています(※1)。
リフォーム費用は数十万円から数百万円と、建物の築年数や構造、リフォームの内容等によって幅があります。
購入前にはリフォームの希望や必要性、内容等を確認し、見積もりを取得し予算を把握することが重要です。
なお、リフォーム費用について借り入れを希望する場合、住宅ローンとリフォーム資金をセットにした住宅ローン商品を扱っている金融機関もあるので調べておくとよいでしょう。
中古住宅の購入契約をする際の注意点
新築住宅と異なり法令などで手厚い保証がないだけに、購入を決めるに当たっては確認すべきポイントがあります。
(1)保証の確認
新築住宅では「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき建物の構造耐力上主要な部分や雨漏りについて10年間の保証がありますが、中古住宅には品確法が適用されず、契約不適合責任による法律上の請求期限である1年間の保証のみになります。
さらに個人間売買の場合、特約により契約不適合責任が免除されたり期間が短縮されたりするケースが一般的です。
売主が不動産会社の場合、契約不適合責任の通知期間は引き渡しから2年以上としなければならず、ハウスメーカーなどの建物の場合はメーカーが定める保証やアフターサービスもあるため、内容について確認しておきましょう。
(2)インスペクション
中古住宅の場合、購入前の建物チェックが重要ですが、住宅の瑕疵については素人ではなかなか判断ができないため、専門家によるインスペクション(建物状況調査)の利用が増えています。
インスペクションの実施率はまだ低く14%程度ですが、毎年実施率は上昇しています。
戸建ての実施率が17.7%とマンションの10.4%よりも高いのは、戸建ては瑕疵がわかりにくく購入者の不安も大きいことが理由と考えられるようです(※1)。
インスペクションの費用は建物の構造や広さなどによりますが5万円~15万円程度が一般的で、インスペクションを実施した側が負担します。安心して中古住宅を購入するために、インスペクションの実施も検討しましょう。
(3)既存住宅売買瑕疵保険
中古住宅の場合、新築住宅のような手厚い保証がありませんが、瑕疵に備えるために既存住宅売買瑕疵保険があります。
売主が不動産会社の場合は売主が加入し、個人間売買の場合は通常は売主(または買主)が検査事業者、不動産仲介業者に加入を依頼します。
この保険は、住宅の検査と住宅の基本構造部分の保証がセットになっているため、買主にとっては安心です。
中古マンション購入時の注意点
中古住宅の中でも中古マンションは中古戸建て住宅にはないチェックポイントがあります。
(1)日常の管理が適切に行われているか
マンションの価値は管理であるともいわれています。
特にエントランスや駐輪場、ごみ集積所、植栽などの共用部分がきれいに保たれているかは管理の状態を測る重要なチェックポイントです。
管理委託契約書、決算報告書等の提示請求をして管理内容や管理状況についても検討段階で確認しましょう。
(2)長期修繕計画が作成され、修繕積立金が適切に積み立てられているか
マンションの資産価値維持のために必要な長期修繕計画が作成されているか、適切な修繕積立金が確保できているかのチェックも重要です。
計画に対して修繕積立金が不足している場合、購入後に修繕積立金が値上げされる可能性が高くなります。
また、滞納率が高いと計画通りに大規模修繕等が実施できないおそれがあります。
3ヶ月以上の滞納が発生している住戸のあるマンションの割合は24.8%に上りますが、築年数が経過しているマンションほど滞納率が高い傾向があります(※2)。
(3)売主に管理費等の滞納がないか
売主が管理費や修繕積立金を滞納している場合は、購入者がその債務を引き継ぎます。
後でトラブルにならないよう事前に確認しましょう。
(4)賃貸割合が高くないか
新築時は区分所有者が居住しても、経年に伴い各所有者の事情やマンション内の住戸が不動産投資の対象になるなどして賃借人の入居割合が増加します。
賃借人の割合が高くなると管理組合の運営に支障を来すこともあり注意が必要です。
出口戦略(将来の建て替え、住み替えなど)も考慮する
中古住宅は、購入時にはすでに築年数が経過しており、一般的に新築住宅に比べて耐久性等も劣ります。そのため、遠くない時期に建て替えや大規模修繕が必要になることも考えられます。
将来の建て替えや住み替えも視野に入れ、ライフプランや資金計画を設計しておくことも必要です。
中古住宅に関して国は、かつての「スクラップ&ビルド」の社会から「いい住宅をつくり、きちんと手入れをして、長く大切に使う」社会へ移行するために、中古住宅ではなく「既存住宅」と呼び、流通の促進に力を入れています。
「インスペクション」のほか、国土交通省の主導で2018年に始まった「安心R住宅」制度、民間主導の「スムストック」(※3)なども押さえておきたいキーワードです。
2000年に始まった「住宅性能評価制度」を利用した住宅や、2009年に認定を開始した「長期優良住宅」など”見える化”した高品質の住宅が中古住宅市場に現れ始めています。
また、中古マンションにおいても、2022年4月に「マンション管理適正評価制度」(※4)が始まり、登録されたマンションの管理レベルが情報開示されることになりました。
これらの制度を利用し、安心して購入することが出来るようになったお陰で購入者が増えることにより、中古住宅の市場活況に繋がっています。今回の記事内容をしっかりと押さえて今後の中古住宅選びをしてみてください。
※1 国土交通省「令和2年度住宅市場動向調査」
※2 国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果報告」
※3 一般社団法人優良ストック住宅推進協議会
※4 一般社団法人マンション管理業協会
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